カナ・ラボの原点
1989年、私の父は前立腺癌が脊椎まで転移した末期癌で「余命2ヵ月」と宣告を受けました。
抗癌剤で衰弱してゆく父を見て誰もが納得する宣告でしたが、私はあきらめきれず、必至で治療法を探していました。そうして、出会ったのが「ゲルソン療法」という食事療法でした。聞いたこともないどころか、当時は食事で癌が治るということ自体が信じ難いことでした。
ゲルソン療法とは
ゲルソン療法の基本の考え方は、「例え体に癌があったとしても、癌ではない細胞の方がはるかに多い。その細胞が元気ならば、癌細胞は退化させることが可能である。癌細胞の栄養になる物質を摂らず、他の元気な細胞が必要とする栄養物質だけを摂取することで、体の免疫力も上がり、癌細胞は退化する。」ということです。
癌細胞の栄養となる糖質や、脂肪、塩分、動物性蛋白質を徹底的に除去し、ビタミンやミネラルを豊富に含む果物や野菜、オメガ3系の油、膵臓酵素を摂取するという、癌治療には基本になる食事療法です。
味の濃い食事、ファーストフード、肉食をしてきた人にとっては少し過酷な食事療法ですが副作用がなく、癌細胞だけではなく他の元気な細胞にまでダメージを与える抗癌剤より、はるかに回復する可能性があると思いました。
「あきらめるのは死んだときね」
歩行が困難な父を車椅子に乗せて、私と父はそんな会話を笑いながら交わし、メキシコのゲルソン病院に向かいました。
それから約2か月後―
父は奇跡のように寛解し、しっかりした足取りで帰国しました。
父が末期癌になってくれたお蔭で、食事(栄養)療法・心理療法・適度な運動・支え合う仲間…それらがどれほど大切であるかを学びました。
さらに人生を方向付けたのは、ゲルソン病院の書棚から偶然手にとった一冊の本。ロジャー・ウイリアムス博士(ビタミンB5の発見者であり、葉酸の名づけ親)の栄養学の書籍でした。それは、「栄養学は、人や生物に何がどれくらい必要かということを明らかにする科学」として、栄養素の機能を解説しながら個々人への対応について解明している、博士の力作ともいわれるものでした。
当時の日本の栄養学はカロリー栄養学が中心となり、栄養物質それぞれが、どの部位に、どのように機能するかなど、詳細な機能に基づく科学的な説明はほとんどありませんでした。
私たちの体の中には、私たちが食べたもの以外のものからつくられるものは何一つ存在しないということは、学問的に真実です。私たちの体は細部に至るまですべて、顕微鏡でしか見えない構造や、顕微鏡でも見えないほど小さな構造でさえ、食物として口から摂り入れた材料を用いて作らなければなりません。からだは食べ物次第で良くも悪くも作られます
ロジャー・ウイリアムス
この文言を『癌センター』で読んでいたら「へーっ、そうなんだ…」とただの知識として終わったことでしょう。まさに目の前に、この内容を裏付ける患者さんが何人もいる『ゲルソン病院』で読んでいた私には、疑う余地はありませんでした。
さらに、この本の最後に、このようなメッセージ(概略)が書かれていました。
『読者が良い栄養とその可能性全部について今、熱心に世界中に広めることを希望します。…栄養の可能性を自分自身が知り、次に他の人々に知らせ、そして、力の及ぶ限りそのことを理解してくれることを望みます』
考えてみれば、情報を発信してくれた人がいたから、父の命は救われました。
製薬会社から非難されるかも知れない、食品メーカーから非難されるかも知れない…様々なリスクを抱えながらも情報を発信してくれた人たちがいたから、父も自分も家族も元気に生きることができると思い、ただ感謝しかありませんでした。
この体験とこの想いが、私(カナ・ラボ)の原点です。
カナ・ラボは、微力ながらも、良い情報とその可能性を伝えるメッセンジャーで在り続けようと思います。
発達障害に関わった経緯
2002年〜2013年の約11年間、私は当時パートナーだった医師と共に統合医療のG(名称略)クリニックを設立し、医療に関わることになりました。
それまでの12年間は、癌患者さんのサポートや、分子栄養学を基本に栄養学の講演活動やカウンセリングが主な仕事でした。
発達障害の治療に関わり始めたのは、開院して2年目のことでした。
Gクリニックには、私の親友の川畑のぶこさん(現在サイモントン療法協会副理事)がアメリカから帰国しスタッフとして関わっていたことで、特に米国の情報が得やすい環境にありました。また、医師の経歴が、工学部を卒業してから医学を志したことで化学に詳しく、特に有害重金属の排出のことには経験的にも詳しい知識がありました。
このような特別な環境が整っていたこともあって、Gクリニックでは「デトックス(解毒・排出)」をコンセプトにした治療を行っていました。
当時は、「デトックス」を基本に「毛髪ミネラル検査」や「腸内洗浄」を実施するクリニックは珍しく、また医師が書籍を多数出版したこともあり、ちょっとだけ名前の知れたクリニックになっていました。
そのような中、2004年NHKの報道番組で「自閉症と診断された子どもたちが水銀に汚染されていて、その水銀を除去することで症状が改善した」というような内容の情報が報道されました。その翌日、クリニックには毛髪ミネラル検査を希望する電話やメール、ファックスが400件以上届きました。
自閉症のお子さんを持つ親御さんたちが、水銀濃度を調べて排出させたい一心で必死に調べ、連絡してきたのだと思います。
それからGクリニックは一変し、広汎性発達障害・自閉症の治療に深く関わることになりました。
予想もしない展開でしたが、私たちスタッフは、迷う暇もなく、医師から提供される小児精神医学、脳科学、分子遺伝学、分子栄養学、毒性学など広範囲の情報と、患者さんから得る情報をもとに、ただ学ぶことに精一杯の日々を過ごしました。
日本の病院では「自閉症は治らない」という前提で治療が行われ、提供される治療の殆どは投薬と療育ですが、私たちのクリニックでは「改善する可能性がある」という前提で、様々な検査や食事療法、サプリメント治療を行いました。
Gクリニックには、他の医師から見放された子どもさんたちや、養育に取り組んでいても思うように結果が得られない親子さんたちが多く訪れました。
そのような子供たちが、検査結果を基にした栄養的なアプローチによって驚くほど変化してゆきました。
発達障害の原因は未だ解明されていないと言われていますが、
子どもたちの問題行動や症状を改善する方法は存在しているということを確信しました。
今現在、Gクリニックで行っていたアプローチはカナ・ラボが引き継ぎ、新たに、門脇加枝医学博士(3人の子どもを一人で育てた明るく、強く、優しい母であり、小児医療に詳しい)の指導と、他のクリニックや関連機関との協力で、これまで通り各種検査、サプリメントによるアプローチ、カウンセリングを実施しています。
私たちの考え
受け入れること、そしてできることから始めること
ご相談に来られる方の半数は病院で診断を受ける前の方で、チェックリストで確認したり、ご自身で判断して不安になった方です。
誰もが、できれば「発達障害」という診断を下されたくないと思っています。
殆どの方が「うちの子に限って…」と、事実を受け入れていません。
「成長すれば落ち着くに違いない」と思いながらも、つい他人との比較をし、同じような様子の子供に会えば安心し、差があれば落ち込みます。
夫から「お前のせいだ」と責められる話もめずらしくありません。
このような発言をしてしまうほど人として未熟な夫もまた、事実を受け入れられず責任を妻に転嫁してしまいます。
そうして、気持ちのやり場もなく悶々(もんもん)としながら、体も心も疲れくると「こんなはずじゃなかった」と、運命と自分を責め苦しい想いをしています。
評価も責任の所在も、実はどうでもよいことです。
なにも罪を犯したわけではないし、誰かを責めることでもなく、ましてや自分を責めるようなことではありません。
診断名も重要ではありません。
発達障害は精神疾患や心理的な障害ではなく、神経の障害です。
環境汚染などの複合的な原因が、神経や神経伝達物質に悪影響を及ぼした結果、社会性や行動に問題のある症状が発症しているのです。
大切なことは、「事実を受け入れる」ことだと思います。
そして、将来一人立ちできることを目指して、様々な症状の改善・緩和のために、今できることから取り組むことだと思います。
改善する方法は存在している
発症の原因には諸説があり、原因を明確にすることは困難ですが、最近の発達障害の文献や、研究に基づいた内容を掲載している書籍には「遺伝的要因と環境要因の相乗作用によって障害が発症している可能性がある」と書かれています。
私自身が臨床に関わった経験や、これまでの各種検査結果と症状の関連を照らし合わせた結果からも、その説が有力であると思います。
アメリカの自閉症研究所のウェブサイトでも次のように説明されています。
「1990年以前は、自閉症児のおよそ2/3に、0歳のうちから目が合いにくい、抱っこされるのも嫌がるなど自閉的な行動特徴が見られた。のこりの1/3が、1歳を過ぎた後から退行が表れはじめたケースだった。
しかし、1990年代からこの傾向は逆転する。0歳の時点で自閉的行動があったケースは1/3に満たず、2/3が生後1~2年目になってから自閉的な行動を示すようになった。この結果から、最近、発症した自閉症児の多くに、1歳~2歳までの間に何か起こったことがわかる。例えば環境の大きな被害、予防接種のワクチンなどの原因が考えられる」
妊娠中に被害を受ければ、胎児のうちから環境被害を受けることになり、0歳の時点から発症する可能性があります。
食生活を改善し、有害物質を除去し、必要な栄養物質を補助しながらエクササイズや教育的なアプローチをするというように、被害を及ぼす環境を変えてアプローチをすれば、少なくとも現時点より改善します。
私は、そうして発達障害が改善した実例を見てきました。
もちろん個体差があるので、誰でも同じように改善するというわけにはいきません。また薬と違い、時間はそれなりにかかりますが、ロジャー・ウイリアムス言ったように、脳や身体が良い方に変化することは物理的に可能なことです。
ここで重要なことは、改善する方法が存在しているということです。
健康のためにも取り組んでみる価値がある
発達障害の子供たちの大半は、体に様々な疾患を抱えています。カゼインやグルテンの消化酵素の問題からもわかりますが、特に腸や消化に関する問題はほぼ全員が抱えていると言っても過言ではありません。
またそれが引き金となり、皮膚疾患などのアレルギー、頭痛、疲労感、倦怠感などの色々な症状が表れています。
食べ物を変え、栄養物質を補うことで、少なくとも体は元気になります。
あきらめず、取り組んでみる価値があると思っています。
人生を楽しむこと
家の中が汚くて、お母さんもボロボロでは、家族全体が荒みます。
私にもありました。家の中は散らかり、精神はボロボロの時。まるで、その悪循環のスパイラルに巻き込んでしまったかのように、子どもの精神状態は私以上に病んでしまいました。私は表面的に繕いながら子どもをサポートしようとしましたが、何の助けにもならないどころか逆効果だったことを思い出します。
この時に、ゲーテの言った『不機嫌ほど罪はない』という意味がよくわかりました(笑)
一番重要なのは、お母さん自身が人生を楽しむこと。
生意気なようですが、そのことを一緒に考えて行きたいと思っています。
僕が自分が楽しいと思う人生を生きて、そこに自分の子供を一緒に相乗りさせてあげること。
子どもが「楽しい!」と思う環境をつくってあげること…自閉症の家族にアドバイスするなら、ユーモアの感覚を持つこと
これは、ご自身の自閉症のお子さんのために「放課後等デイサービス アインシュタイン放課後」を立ち上げた、(株)アイムの代表 佐藤典雅さんの言葉です。