発達障害の基礎知識

発達障害発症の原因

これまで、発達障害の発症原因は不明であると説明されています。しかし、既に世界中で多くの研究がなされ、その発症に遺伝的要因と環境的要因が影響するという報告が見られます。

遺伝的要因には、具体的に遺伝子DNA多型が関係しています。これは、個人差や個性に関連しますが、一例として、神経伝達物質であるドーパミン、ノルアドレナリンやセロトニンなどの合成や分解などの代謝に関係する酵素タンパク質の遺伝子DNAの多型変化が、子供たちの脳の発達に関係することも報告されています。
また、環境的要因として、環境汚染物質である水銀、鉛、PCB、ダイオキシンなどの微量慢性蓄積による影響が指摘されています。

このような要因を考慮して、これまで原因不明とされている自閉症などの症状発症のメカニズムについて、世界中で報告されている論文をもとに推論してみました。これらの発症メカニズムの推論の詳細については、書籍を準備中ですので、その一部を記します。

男の子に多い理由

広汎性発達障害発達障害やADHDにおいて、男児の発症が女児よりも多く、その比率もほぼ一定(約4:1)となっています。何故、このように規則的なものが存在しているのでしょう。多くの研究者が研究を重ねていますが、男性ホルモンであるアンドロゲンやその受容体との関係が提案されています。

さらに、性染色体であるX染色体上の遺伝子の影響も指摘されています。女児の場合、X染色体は2本ありますが、男児の場合、X染色体は1本(もう1本はY染色体)となり、X染色体の変化がそのまま外側に表現される可能性があるのです。このX染色体上にはアンドロゲン受容体の遺伝子も存在していて、その遺伝子DNAの多型が研究されています。
X染色体に関係する遺伝子の変化(遺伝子多型)が、男児の発症を増加させるのではないかと推論しています。

言葉が出ない理由

子供の発語がないという症状は、脳梗塞などを起こした大人の失語症とは大きく異なります。
言葉を獲得するためには、まず相手の話を理解する必要があります。生まれて間もない子供たちでは、まず大人たちの言葉を聞くことから始まりますが、その聞き取りが上手く出来ないと、言葉の習得にもつながりません。

外部からの音の情報を受け入れる聴覚系としては、耳から始まる器官があります。この器官の中で特に内耳という場所にある蝸牛が重要となります。この蝸牛の中にあって音の周波数の違いをキャッチする有毛細胞の成長には、甲状腺ホルモンが関与しています。そして、甲状腺ホルモンの産生に水銀が阻害作用を及ぼすことが分かっているのです。微量でも脳などに慢性蓄積した水銀が、子供たちの言葉の発達課題を遅らせる可能性があります。

癇癪、パニックを起こしやすい理由

子供たちの脳の中で感情のキャッチをし、表現をする際に重要な場所として扁桃体(こめかみの奥辺りで、アーモンド型をしている)があります。この部分は乳幼児から発達し、喜怒哀楽などの感情反応の発達に関係しています。この部分を含めて、その働きがコントロールされないと感情の爆発となって癇癪やパニックになる可能性があります。

この扁桃体には脳を刺激する興奮性アミノ酸であるグルタミン酸を神経伝達物質とする神経が多く集まっています。このグルタミン酸神経はカルシウムを細胞内に送り込んで神経を活性化します。この活性化によって感情変化が起きるのですが、この刺激が続きすぎるとコントロールが出来なくなり、感情の爆発となります。このカルシウムは短時間作用した後は速やかに細胞外に運び出さなければいけませんが、環境汚染物質である鉛が脳に微量慢性蓄積していると、カルシウムの排泄を阻害します。この結果、感情コントロールが難しくなり、さらにその状況が続くと神経細胞は自滅(神経細胞死)してしまいます。

これまで説明したように、遺伝子DNA多型による個人差、個性に加えて、微量慢性蓄積した環境汚染物質が、子供たちの脳の発達する重要な時期に影響して、様々な発達課題にブレーキをかけてしまうのです。遺伝的要因と環境的要因は子供たちそれぞれで異なるので、影響を受けている個々の子供たちの状態を詳しく調べる必要があります。

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