取り組んだ方々の声

体験談 HUくん(29歳・東京)

治療の限界とあきらめ

しかし、いくら頑張っても、これ以上望めない限界を感じてくる。脳の状態が良くならなければ、どうしようもないというあきらめの気持ちが、大人へと成長していく息子とともに私の心に定着してきた。育つ環境はできるだけのことはしたし、愛情も注いだつもりだ。家では食後の食器洗いなどの簡単な用事もできるように教えた。数字に関する記憶は強い。最近、何故数字に対する記憶がいいのか尋ねたら、本人は、とにかく覚えていると言う。だが、社会生活を送る上では、特に対人と関わることには数字の強さは役には立たない。臨機応変は全くできない。根本部分である脳の状態が良くならなければ、もうこれ以上はあきらめるしかないのではないか? 息子の脳はどうなっているのだろう? どこが普通と言われている人と違っているのだろう? ちょっと投げやりな気持ちの時もあった。
医学はどこまで進歩しているのか? 一時、近くのある病院で自閉症の薬の開発をしている医師がいるのを聞きつけて訪れてみた。処方された薬を飲んでみたが、却って興奮したので、数ヶ月で止めた。また、小学五年生の時に、担任との折り合いが悪く、自宅に帰ると騒いだ。これが引き金となってチックが始まった。
新聞に、某病院でトレット症候群に薬を処方すると、状態が良くなるという記事が出ていた。息子の状態が悪かったので、直にコンタクトを取り、その後は処方箋をもらいに通った。今は、もうこの薬は飲んでいない。後述するサプリメント治療をするようになってから必要を感じなくなったからだ。私が薬を止めたいことを伝えると、医師も息子の落ち着いた様子を見て、止めてもいいと言ってくれた。因みにチックも脳が原因で、ストレスなどがきっかけとなって発症することは、医師から説明を受けている。やはり、詰まるところは脳の状態が良くならなければならないということだ。
その後は、これといって真新しい医学的な情報も得られないまま年月は経っていった。

やがて息子は高校を卒業して、作業所に福祉的就労をした。幸いその職場は息子に合っているようで、楽しそうに通所している。相変わらず、私には理由がわからないことでイライラしていることが時々あり、ヒステリックになって泣いたりするのは、大人になっても変わらなかった。世間ではパニックと呼んでいる。息子は障害手帳で言えば中度で、パニックも頻繁に起こすわけではない。しかし、この症状がいつ出てくるかと思うと、私は息子が小さい時から、一緒に外出する時は身構えた。外でパニックが起きると、理解のない人達から奇異な目で見られ、ストレス度が増し、とても疲れた。常に気が張っているという言葉がピッタリである。また、傍でパニックを見ていると、どうしても苛立ってくるのは生身の人間であれば致し方ないと思う。当事者としての実感である。
それでも、息子も働くようになり、親としては一区切りついた。障害の子供を持つと、将来を考えて気が休まるときはないが、息子の人生もまあそれなりだと思った。このままの状態で、やがて息子は歳を取って老いていくのだと思っていた。

新たな情報と希望

丁度その頃のことである。テレビの報道番組をたまたま見た。アメリカでは自閉症の研究が日本より進んでいることを知った。
自閉症が良くなる可能性が、まだあるかもしれない。ただ、薬を使った治療だったので、少しでも飲む時間を間違えると、悪くなるようだ。それだと、専門医につきっきりで治療をしないといけないわけだ。それに失敗すると怖い。まだ、日本ではそんな医師はいないだろう。だが、何か情報を得られないかと思い、そのテレビ局に電話で問い合わせてみた。インターネット上で、キレートの情報が得られるとの回答を得た。自閉症が良くなることをあきらめていたのに、俄かに希望が出てきた。
キレートって何? インターネットでキレート情報を検索した。キレートはギリシャ語でカニのはさみの意味だった。自閉症の治療に関しては、有害な金属をキレート剤がはさんで体外に出すということ。つまり、デトックス。有害な金属を体から、特に脳から出すということは絶対良い結果に繋がるだろうと納得した。もともと脳からくる障害なので、脳を改善していけば、息子の状態は良くなる可能性はあると思った。
可能性があるのなら、やってみたい。なんとかしてやろう精神と即実行の私は、その日から情報を得ようと毎日のようにインターネット検索をした。結果的に報道番組がきっかけとなり、私なりの勉強が始まった。毛髪検査を一度行ったことが縁で、デトックス情報を得るべく、京都まで行って講演会に参加したこともある。ただ、よくわからないこともあり、噛み砕いて教えてくれる誰かの必要を日々感じていた。
そうしている内に、アメリカの検査会社の存在を知った。薬でないキレートをしていることに安全性を感じた。早速そこで尿検査をおこなったが、検査結果を日本人のスタッフに翻訳してもらわなければならないもどかしさがあった。その研究所の先生が日本で講演をされた時も聴きに行ったが、内容が難しい。それに、即実行の私でもアメリカは遠いので、今後、余分なエネルギーを使って研究所とコンタクトを取るのは煩わしい。日本でこういうことをやっている医師はいないのだろうかといつも思っていた。ある時たまたま、一記者のコメントを見て、日本でも行っている医師の存在を知った。しかも、薬を使わないデトックスのようだ。早速、記者にコンタクトを取り、そのクリニックに直に電話をしてアポイントを取った。それが現在の(株)カナ・ラボの前身のクリニックだった。

そのクリニックの院長の経歴を調べると、医師になる前、工学部で化学を学んだ人ということがわかり安心できた。化学的見地で、脳から有害な金属を出すことを考えているのなら、信用できると思った。なぜなら、これまでの私の経験では、自閉症に関する教育者は教育が全ての先生が多い。医学を否定しているような印象すら受ける。自閉症に関する薬の開発をしている方も、そういうつもりではないのだろうが、薬オンリーの言い方をする。全ての教育者、医師がそうだと言っている訳ではないのだが、得てしてというのが私の印象だ。だが、院長は日本には情報がないということで、海外の文献を読んで、勉強をされ、その上でトータルな分析をされていることがわかった。この柔軟なものの考え方にも共感できた。ともかく、治療を受けてみたいと思った。

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